番外編 最終話 「ありがとう」

ママンが僕に会いに来てくれた時

「ガウディに話があるの」

ってチョットだけ寂しそうな顔をして話しかけてきたんだ。

ドキドキしながらママンの顔をみた。

「もうガウディとは歩けないの。」

「だからね新しいワンコと歩ける様にしてもいいかな?」

だって。

最初はどういう事か分からなくて暫くママンの顔を見つめてた。そして気が付いたんだ。もう長いことハーネスを付けてママンと歩いてない事にね。僕はお家に帰れないし僕がいなければ、ママンは何処にも行けないってこと。僕は自分の事しか考えてなかったんだ。僕がいない間ママンはどうしてたんだろう。どこに行くのもパパの車でしか行けないし、きっと大変だったろうな、不便だっただろうし、ごめんねって謝ったよ。

でも今の僕にはどうしようも出来ない、、、

僕はもう盲導犬じゃないし、、、、

ママンの側にもいられないし、、、

富士ハーネスに来てからは、僕とママンはリードで歩るくようになった。

今ではそれが普通だと思っているよ。

だからね、新しい盲導犬が来てくれてママンが自由に歩いて、出掛ける事が出来たら嬉しいけど、なんだか寂しいよ。ごちゃごちゃした気持ちだな。

その子と僕は仲良く出来るかなあ。

初めてママンと出会って訓練したことを、思い出して泣きたくなった。

 

それからしばらくして、また協会の車に乗って手術をした病院に行って、何かの検査をしたんだ。そのあとに新しいワンコを連れてママンとパパが会いに来てくれた

テディって言う子で白くて、僕と同じ位大きな男の子だった。

その子とは直ぐに仲良くなれて、ママンの事を頼んだんだ。まだまだ赤ちゃんだけどきっと大丈夫。なんてったってママンのパートナーに選ばれたんだから。

315日は僕の8歳の誕生日でママンとパパとテディが来てくれたんだ。

僕は凄く嬉しい気持ちになって、テディとドッグランでいっぱい走ったんだ。

でもその時のママンの感じがちょっといつもと違ったんだ。

テディとうまくいっていないのかなあ、、、。

 

その日の午後には、さらにビックリしたことがあったんだ。

大分の和子ママとパパ、ゆきこママとパパが僕のお誕生日のお祝いに富士ハーネス迄来てくれた。こんな嬉しい事は初めてで、僕の為に皆んなが集まってくれたんだ。

ゆきこママがバースデーケーキを持って来てくれて、皆んなで歌を歌ってくれて、僕ひとりでケーキをバクバク食べちゃった。ゆきこママのパピーのグレッタやテディが居たのにね。皆んなの顔を順番に見て、僕は何て幸せなんだ。そしてその幸せな時間がずっと続きますようにって願ったよ。

綺麗に飾り付けてくれたゆきこママ、和子ママ本当にありがとう。

素敵な素敵な誕生日にしてくれて。

今日の日は絶対に忘れないよ。この素晴らしい思い出があるから僕大丈夫だよ。

 

5月になって、チワワのちくわとリコママ達が初めて会いにきてくれた。久しぶりに会えてすごくうれしかったよ。リコママたちが富士ハーネスに来てくれた理由はまた後で言うことにするね。

別の日にママンたちがハーネスに来てくれたとき

何となくだけど何時ものママンとパパじゃ無い感じがするんだ。

だからね、多分この前の検査の結果があまり良くなかったのかも知れないな。

毎月僕に会いに来てくれるんだけど、その日はなんか様子が違うんだ。

特にパパが僕の側に何時も居て、じっと見つめているんだよ。

凄く明るい顔だけど辛そうな感じがするんだ。

ママンはいつもより僕をたくさんハグするしね。

きっと僕の身体の変化に気が付いたんだね。

その頃の僕は咳が出るようになって、少し走っただけですぐ疲れるようになっていたんだ。

もしかしたら9歳の誕生日は来ないかもしれない。

もうすぐララちゃんに会いに行けるのかな?

 

リコママとパパが富士ハーネスに来てくれた理由を後からママンが教えてくれたんだ。

リコママたちは僕をお家に引き取れるように掛け合ってくれたんだって。

結局は叶わなかったんだけど、、、

皆んなの気持ちがとっても嬉しかったよ。

ありがとう

 

ママンとパパへ

僕は盲導犬としてママンと出会って、いっぱいお仕事したし、色んなことも経験したし、

とても幸せな日々を過ごしたから、もしも僕が眠ったまま起きなくても、泣かないでね。

「ガウディさようなら」って笑って見送ってほしいな。

僕を愛してくれたママンとパパ、僕もママンとパパのこと愛しているよ。

これからもいつでも側にいるからね。

その日が来るまで僕はずっとママンの盲導犬でいさせてね。

 

僕の独り言を聞いてくれてありがとう。

 

写真は僕の誕生日をお祝いしてくれた時のこと

ママンとテディとの3ショット

テディとのツーショット

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