第9話 うみちゃんと車にビビった僕

今日は朝からとってもいい天気だったんだ。

いつも綱引きしてララチャンと遊ぶんだけど毎回僕は負けるんだ。でも今日は僕は力一杯頑張ったんだ。そしたらララちゃんと僕との綱引きは引き分けになった。初めてのことだったから、嬉しくてくわえていた綱を外してララちゃんにぶつかっちゃった。それをパパとママンが見てて「ガウディ成長したね」ってほめてくれたんだ。でもまだララちゃんには勝てないんだ、僕より小さいのに。ララちゃんの方が強いってどういうことなんだろうなあ。もっともっと頑張らなくっちゃね。だって僕男の子だもん。

ママンには前から仲良しのともだちがいて、時々僕をおいて夜に出かけることがあるんだ。なんだろう?って思っちゃうよ。ママンは「ガウディ留守番しててね」って言うんだけど僕は心配でしょうがないんだ。そんな僕をみてパパが説明してくれたよ。そのお友達はよしこちゃん。視覚障害者のサポートをする講習会に出てくれてたんだ。それと米ちゃんと3人でお食事に行って、それから歌を歌いにスナックに行くんだって。僕はママンが帰ってくるまで心配で心配で寝られないんだよ。でも毎月1回だからその日はララちゃんとぼくとパパとでお留守番するんだよ。ママンが帰ってくるとやっと安心して寝られるんだ。よしこちゃんのワンコはミニチュアダックスのチェルで、ららちゃんと仲がいいんだよ。僕のことは怖いのかな?そばに来てくれないんだ。パパの車でチェルちゃんに会い行ってもぼくは知らん顔されるんだ。ちょっとがっかりしちゃうよ。

この頃がママンのところに来てちょうど一年過ぎた頃なんだ。あっという間の1年だった。色々なことをママンと体験して僕もずいぶんと大人になったような気がする。多分ママンもおんなじように感じてたら嬉しいな。

ある日のことララちゃんとお庭で遊んでいたら、急にララちゃんが垣根の方に走っていったんだ。なんだろって思って僕も行ってみたら内田のお兄ちゃんとお姉ちゃんがちっちゃな子を連れて歩いてた。パパが名前を聞いたら「ウミちゃん」って言うんだって。内田のお兄ちゃんとお姉ちゃんの赤ちゃんだったんだよ。ちっちゃなちっちゃな手をララちゃんに伸ばしてきたんだ。でも僕はララちゃんの後ろに隠れちゃった。だってちっちゃな子を見るのが初めてだったんだ。パパが可愛い女の子だねって言ってたよ。ララちゃんは嬉しそうにニコニコ笑ってたよ。「いってらっしゃい」って尾っぽを振ったから、僕も慌てて尾っぽを振ったんだ。習うことがまだまだいっぱいあるんだって気がついたよ。

それからしばらくしたある日、ママンが車にぶつけられちゃったんだ。ちゃんと端によってママンも止まってたのに。前から来た車がママンにぶつかった途端、僕に「ステイ!」って言ってリードを離してママンは車の後ろに倒れこんだんだ。でもその車はそのまま走って行っちゃった。道を歩いてる人がその車を停めてくれて、救急車をよんでくれた。ママンが救急車に乗ると「ガウディ!ガウディ!」って僕の名前を呼んでくれた。それで僕も一緒に救急車に乗って病院に行ったんだ。ママンは右腕の悪いところをぶつけられてとても痛そうだった。病院で調べたらあっちこっちにアザができていたんだ。僕は一生懸命端っこに寄ってママンを助けたのに怪我をさせちゃった。ママンを助けることが出来なくて僕はとてもショックを受けたんだ。そんな僕にママンは「ガウディが怪我しなくて良かったよ」って言ってくれた。あの時ママンが「ステイ!」って言ってくれなかったら、僕もママンと一緒に飛ばされていたと思うんだ。車はとても怖いって心から思ったよ。幾ら気を付けていてもぶつけて来る人がいる時、僕はどうすればいいのかしばらく落ちこんじゃった。

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